ダウリー

ダウリー殺人というのを簡単に説明しておく事にする。
ダウリー殺人の、ダウリーとは、結婚の際に花嫁側が花婿側に持参する結婚持参金の事を意味する。日本でも婚約時とか、結納の際に持参金を要する場合があるが、これとは少しだけ状況が異なる。インドでのダウリーというのは婚姻時に確実に必要なものなのであり、形式上の慣例とは少々性質を異にしている。また、このダウリーの額というのは、花嫁側の裁量で決定出来る訳ではなく、花婿側の裁量によって決定されるものであって、望めば望む程幾らでも圧し掛かってくる。また、婚姻に掛かる費用(婚資)諸々も花嫁側が負担せねばならない。あるページで調べたところ、ダウリーと婚資に掛かる費用の平均額は、約10000ルピー程度とあった。資料を集めたページでは、これを平均年収の4倍と表記していたが、幾らなんでも平均年収が2500ルピーというのは嘘だ。それは近年の資料を見て頂ければ分かると思う。この資料にはちょっとした誇張があるにしろ、恐らくは大体年収と同額〜2倍程度の婚姻費用が実際に要求されていると予測しても間違いではあるまい。
ちなみにごく最近のインドの平均年収*1を記しておくと、約23000ルピー(GNI(一人当たりの年間国民平均所得)=540ドル<2003)である。1ドル=43ルピー<2005年>あるいは1ルピー=2.5円)
花嫁側は、貰って頂くといった様な立場に置かれている為に、基本的に花婿側の要求を拒否するのは困難だ。拒否すれば、放逐され、スティグマが付される。こうなってしまうとインド社会で生きていくのは困難だ。
こうした中で、圧倒的優位に立つ花婿側がその持てる力を無慈悲に用いた場合、どうなるか?そう、毟り取れるだけ、毟り取って、もうこれ以上利用出来ない、と思ったところで、花嫁を亡き者にしてしまえば良い。そうすればまた新たな金蔓を獲得出来る訳だ。こうして起こるのがダウリー殺人という訳だ。
1961年に制定された「ダウリー禁止法」も空しく、1980年代半ばに確認されてダウリー殺人の件数は約400件、96年には約5500人、02年では約7000人と加速の度合いを強めていっている。

*1:現在、興隆を見せているIT産業に従事している者の場合、平均月収ですでに15000ルピー以上貰っている。特にインドの最高峰学府であるインド工科大学を卒業したエリートの場合であれば、より以上。