天国までの百マイル
- 出版社/メーカー: 日活
- 発売日: 2001/04/27
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 14回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
主人公は、バブル期に破産して妻に離婚されるは、仕事も上手くいかないわで、何をやっても上手くいかない中年サラリーマン。そんな彼の母親が心臓を患う。母親だけは何としてでも失いたくないということで、遠方の名医に治療を頼むべく車で旅に出て・・・。
というようなストーリ。原作が好きなので、借りてみたのだが、悪くなかった。っていうか、正直、恥ずかしながら途中何度か涙を拭うことになってしまった。
<印象に残ったシーン>:
主人公はホステスのヒモ(のようなモノ)をしているのだけれども、そのホステス役の大竹しのぶの名演が印象的。その生き方が明るく健気で、なにしろ不幸で泣ける。主人公は別れた妻を未だに愛していて、自分とは一緒になる気が無い事を知りながら、しかしそれでも主人公の幸福を祈るあまり、ホステスはこんな事を言う。
「愛して貰うより、愛している事の方がずっと楽しくて、素敵な気持ちになれる。だから私は、やっちゃん(主人公)にありがとうって言いたい。幸せになってね。愛してるよ」
影で主人公を徹底的に支えながら、一度自分が主人公の幸せの障害になる事を悟ったら、直ちに身を引く。あまりにも健気で、不幸。
正直、主人公が非道いヤツだ、と言えば、全くその通りで、大竹しのぶ演じるホステスは“良い女”像=男にとって都合の良い女であって、彼女自身の幸せというのはこれっぽっちも省みられていない。こういうのに対して恐らくジェンダー論やフェミニズムの“的確にしてナンセンスな”分析は何某かの回答を出し得るのだろうが、しかしそれでやりきれるほど人間の関係というのは単純じゃない。
このシュチュエーションの儚く悲しい愛の美しさは、そういう表面的(と言うと言い過ぎかも知れないが)な理解を超えたところにあるのではなかろうか。
いやはや、それにしても浅田次郎は、不幸だが健気で強い女性を描かせたら天下一品だな。実に巧い。