サン・テグジュペリの名作『星の王子さま』の新訳版が相次いで出版されている。
岩波書店がこれまで約60年に渡って所有していた、著作権が今年2005年1月に消滅したためだ。これまでの内藤濯(ないとう あろう)さん、の翻訳に加え、独自色を出した新たな『星の王子さま』が読めるようになる。

そんな矢先、宝島社の新訳を担当されていた、作家の倉橋由美子さんの弔報が飛び込んできた。亡くなったのは6月10日、享年は69歳であった。

僕は、『聖少女』『大人のための残酷童話』『夢の通い路』といった倉橋さんの作品しか読んでいないのだけれど、たった数冊だけにも関わらず鮮烈な印象が未だに残っている。あの生々しくもエロティックな幻想の世界に陶酔しながらも、同時に崇高な精神性を感じられるところが素敵だった。

これから先、年を重ねる度に倉橋さんの文学がどのように深化していっただろうか、
などと考えると、残念で仕方ないが。

ご冥福をお祈りいたします。



追悼の意を込めて今まで読んだ作品を読み返してみると共に、
そのほかの興味深い小説、

・『よもつひらさか往還』
・『人間のない神』
・『城の中の城』→『交歓』→『夢の浮橋

を読んでみよう。