ほんまに

なにやってんだか、と思っちゃうのだけれど、坂東眞砂子さん著『死国』を読んでしまった。で、こんな時間になってしまったと。何れ映画版も見ようと思います。感想は、視覚的表現とそれによる「その場の雰囲気」の表現に優れた作品だな、ってなとこでしょうか。例えば山川草木等の環境や自然風景の描写が鮮明(イメージし易く)で、読んでいる側もこの『死国』の舞台となっている山村を想像しやすいってのがある。んでそれはつまり、この作品に入り込み易いという事でもある、と。
そしてまた作中の登場人物達の交わす土佐弁の音感がそれに花を添える訳です。ネチっとどろっとした独特の雰囲気がある言葉だなぁと、思ったわけで、この音の具合が何とも良く作品を日常世界から異化する訳ですよ。かといって、ちっとも非現実的じゃぁ無いのが凄いですな。

他にも、直ぐに情報(噂話)が広がっちゃう村の閉鎖性(あるいは狭さ)なんて言ったものが上手く描かれてて、それによって共同体内の価値や伝統がどれだけ強固なものなのかってのが良く伝わってくる訳です。

まぁ、こんな感じで「場の雰囲気」だとか、視覚的な風景を想像しやすい作品なのです。これは作者が上手いのだろうなぁ。残念な点は、美しさを感じる場面が無いこと、とストーリー展開が割にありがちなこと。折角、死者が甦るってぇのに、それを怖がらせる為とか同情の装置として使うのは勿体無い。「美」をもっと描いて欲しかったなぁ。


黄泉がえり』と似てるなぁこの作品、と思ったのは私だけでは無いと信じたい。