妖怪=アニミズム?

妖怪は幽霊ではない。どちらかと言うと、怪物に近いモノなのであろうが、怪物とも違う。それよりは寧ろ、カミや精霊に近いモノといった方が良いだろう。
と、議論をややこしくするのもなんなので、さっさと端的に言うと、僕は
妖怪は、アニミズムの亜種なんだろうと考えている。あくまで亜種であって、アニミズムそのものでは無い。アニミズムというのはごく大雑把に言えば、「万物宿根」=あらゆる事物・現象を擬人化し、あらゆるものに人間と同じような魂(=精神的な価値)が宿っているとする考え方である。木や動物、昆虫に、海に風や岩に、と数え上げればキリが無いがとにかく何にでも魂が備わっているというわけだ。



 妖怪もこのアニミズムの影響を強く受けたものであるには違いない。しかし、アニミズムと言い切ることに若干の抵抗がある。例えば「カマイタチ」なんていう有名な妖怪が居るが、カマイタチは「ツムジ風によって皮膚が切れる」という自然現象に「鎌を持った(或いは手が鎌になった)イタチの親子」がする悪戯だ、という形を与えたものである。その自然現象に一種の人格性を認めているという点に関して言えば、このカマイタチもアニミズムであるということが出来るかも知れないが、しかしそれだけではない。

何故、この皮膚が切れる現象を「神罰」「祟り」といった目に見えないエネルギーによる効果、というように説明せずに合えて人型(或いは動物に類似)の形を与えたのか。ここにアニミズムという概念に収まりきらない何か別の要素が隠れていると思われる。